和本における編集の役割と用語
「著」 最も一般的な用語。内容に創造性があって、それに書き手が責任を有することが条件。
「撰」 江戸時代は著とほぼ同義に使う。たんに選ぶこととは区別される。厳密には著ほど創造性はないが、
その人の文章でことがらを述べたときに使う。勅撰集のように和歌の撰はえらぶ意味で用いている。
「選」 先人の作品のなかから優れたものを選んでまとめること。撰との違いに注意。
「述」 文字どおり講義などで述べたことを筆記して文章化したときにも用いるが
(その場合は口述との表記もある)、意見を述べたものという意味で用いる。
「書」 文字を書いた者。写本を書いた人ということで筆を用いるときもある。
「記」 記した者。書きとめる(筆記)、書きとどめる(記録)、ありのまま記す(記事)などの用例がある。
「録」 書いたものをとどめておく。
記録、筆録。歴史をしるす(実録)、題目を書き並べる(目録)、編集して書きとどめる(編録)。
「抄(鈔)」 抜き書きをする(抄録)、写すこと(手抄)。注釈を加えることにも使う。
「集」 文章や詩歌などの材料を集めてまとめること。
「輯」 集とほぼ同じだが、もう少し編集に近く系統立てるという意味がある。聚や緝ともいう。
「編」 諸説を集めたあと、それらを総合し系統立てること。篇は書物の部立てに用いる。
「纂(さん)」 現在では編と同義に用いるが、正しくは編したのちにさらに厳密に整理を加えることをいう。
したがって、輯・編・纂の順でしだいに高度な編集をすることになる。
「作」 作者という意味で著と同じ。草紙類は著といわず、作を用いることが多い。
文章以外の本のときにこれを用いることがある。たとえば地図の制作。
「注」 註とも。より深い理解が得られるように本文に加える説明。解釈も加えたときは注釈となる。
「疏(そ)」 故人の注を集めてさらにその注に解釈を加えること。注疏ともいう。古くはしょといった。
「解」 解釈。げともいう。各家の解に取捨を加えたものを集解(しっかい)という。注とともにあれば注解。
「義」 文字や文章の意味を解説すること。漢籍では音韻とともに解説するときは音義といい、
とくに経書(四書五経など)の本文に解説をくわえることを正義(せいぎ)という。
「標」 しるしをつける。欄外などに注を入れることを評註という。
「考」 自分の考えをいうのではなく、他社の文に自分の意見をつけ加えるとき(備考)にもいう。
「点」 連歌俳諧では作品の優劣を判じて評点を付した者。判ともいう。漢籍では訓点を施した者。
「批」 漢詩に批評を加えた者。謙遜して「○○妄批」と書くことがある。
「訳」 外国語から日本語に翻訳すること。古語を今様(いまよう)にしたときもいう。
「校」 校定、校訂、校正。字句の誤りを正す。他の文と文字の照合を行うことを校合(きょうごう)という。
校註は校訂をして注も加える。中国では校勘(こうかん)といってこの仕事を重視した。
「画」 画家。挿画、絵巻、絵本の作家。図・絵ともいう。
参考文献
橋口侯之介『和本入門』平凡社ライブラリー744、2011年、平凡社
橋口侯之介『江戸の本屋と本づくり』平凡社ライブラリー747、2011年、平凡社
橋口侯之介『和本への招待』角川選書492、2011、角川学芸出板
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